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第4回アート&デザイン新世代賞・受賞作決定! Posted on 2020/11/25 Design Stories  

10月の終わり、第4回アート&デザイン新世代賞の審査会が西麻布のホテルにて開催された。当日は審査員長の辻仁成をはじめ、審査員の島田成年さん(起業家)、佐藤悌章さん(シマダアセットパートナーズ株式会社)の3名とパリから建築家の田根剛さんがZOOMでの参加となった。

今回で第4回目を迎えた新世代賞。今回のテーマは「君がリデザインするアフターコロナのホテル」。
今年は新型コロナウィルス感染症の流行により、この世界のあらゆる事象が大なり小なりそのレゾンデートル(存在理由)を揺さぶられることになりました。そんなこの時代だからこそ届けたい、若い世代が描く新しいカタチのホテルのデザインを広く募集しました。コロナの影響もあり作品の制作は難しいのでは? という心配もありましたが、蓋を開ければ若い世代ならではの発想、想像力でリデザインされた未来へと繋がる新しい時代のホテルがそこにありました。
 

第4回アート&デザイン新世代賞・受賞作決定!

まず、応募作品の中から編集部内にて一次審査を行い、最終審査に臨む12作品が選出されました。
 
■一次審査通過作品■
 
(1) 遊びの間〜遊戯的ホテル空間の試作〜・・・角張 渉さん(24歳)
(2) あるいは流れる風のような・・・山中 岳さん(22歳)
(3) 小さな友、或いは共に歩いた記憶・・・水口麟太郎さん(26歳)
(4) 不・自然・・・中村音音さん(21歳)
(5) Drive-in HOTEL・・・徳野友香さん(23歳)
(6) 山/湖の波間に・・・木村友哉さん(24歳)
(7) Le;Place・・・Ri(グループ名):木村有里佳さん(23歳)、山﨑理莉子さん(22歳)
(8) 昇り途・・・North house(グループ名):北村彩夏さん(21歳)、菅家 結さん(20歳)
(9) 巣まう・・・吉川一哉さん(24歳)
(10) 立体駐泊場・・・荒木鴻歩さん(23歳)
(11) HOTEL gororis・・・森川ひかりさん(25歳)
(12)「出会い」を選択するホテル・・・田中 勝さん(26歳)
 

第4回アート&デザイン新世代賞・受賞作決定!

■審査員(敬称略・順不同)
辻仁成/Hitonari Tsuji(作家、Design Stories主宰、審査員長)
田根 剛/Tsuyoshi Tane(建築家)
島田成年/Narutoshi Shimada(起業家)
佐藤悌章/Yoshiaki Sato(シマダアセットパートナーズ株式会社)
 
各審査員の方々には事前に一次審査を通過した12作品について個別に目を通していただき、それぞれの中での優秀作品の選出をお願い。審査会当日は選出理由についての発表から始まリ、12作品の中からさらに5作品まで絞り込み、受賞作決定へと進められて行きました。

どれも魅力ある作品であり、その世界観、それぞれのアイデア工夫、未来への可能性を秘めたデザインとしては面白いものでしたが、残念ながら5作品の中に審査員を驚かすような飛び抜けた作品はなく、発想は面白いが内容が乏しい、表現しきれていない、といった中途半端に完結している作品も多くあり、もう一捻りあれば、といった印象を審査員に与える結果となりました。そのため、残念ながら今回は最優秀賞は該当作なしという結果となりました。
しかし、その代わりに、最後まで残った5作品の中から審査員がそれぞれに一押しした4作品を優秀賞とし、優秀賞にはあと一歩及ばず、しかし賞を外すには惜しいと判断した1作品に特別賞を授与しようという結論となりました。
不完全な中にも可能性を秘め、未来に繋がるデザインと言う点において、審査員も高く評価した作品たちです。

第4回アート&デザイン新世代賞の受賞作品は以下の通りです。
 

第4回アート&デザイン新世代賞・受賞作決定!

審査員の選出理由(敬称略・順不同)
 
■田根 剛(建築家)
ホテルは公共性があり、自由を受け入れてもらえる空間だ。1番の角張渉さんの提案は人の行動の自由と使い方の自由とが共存でき、かつひとの距離と関係を保ちながら可変的な活動が舞台装置のようにシーンを生み出し、使う側と見る側が一体となっている。その点を高く評価した。コンペというのは、実用性ではなく、世の中には未だ存在していなけれど、その先の未来をつくる為または示唆してくれることに意義がある。その可能性を提案してくれるようなデザインの思考、概念の発想、社会的発想を既成概念にとらわれずに自由をもって考えている点において、他の作品よりもテーマを投げかけている点が面白いと思った。
もう一点、11番の森川ひかりさんの「HOTEL gororis」は、個人的な思いを発端に創作をはじめた情緒性の高い作品だと思う。個人的な体験や想いは、モノを創る側のモチベーションになるので、それは素晴らしい、と評価した。ただ、それを一つの提案にできているかというえば想定内で終わっている。その思いの強さに期待しながらも、提案された作品への昇華がものたりず、既存のホテルの価値観になってしまっているのが残念に思った。

■島田成年(起業家)
8番北村彩夏さんの「昇り途」はまさにこのコロナの時代だからこそ生まれた作品ではないかと思う。随所にこの時代ならではの発想が散りばめられており、コロナにより様々な影響を受け続ける人間の心の部分に寄り添い、そこにはロマンもしっかり存在し、コロナの時代に作る意味を感じる作品だと思いましたね。
次に挙げるとすると7番木村有里佳さんの「Le;Place」かな。でも、Le;Placeは似たようなものが既に存在するため、審査対象からは外しました。あと、海外にモーテルってありますよね、その延長で考えると立体駐車場を再構築する10番荒木鴻歩さんの「立体駐泊場」は面白いと思ったけど、ホテルをリデザインするという観点から言うと疑問は残るし、難しいと思う。なので、やはり僕の一押しは「昇り途」ですね。一人でいることを認めてくれるホテル。優しいですよね。

■佐藤悌章(シマダアセットパートナーズ株式会社)
僕が面白いと思ったのは10番の荒木鴻歩さん「立体駐泊場」。立体駐車場をホテルに変えるという発想に驚いたし、実に面白いなと感じた。密を避ける、人との接触を減らすという点においても、車のまま移動できるホテルは、コロナの時代にありえると思った。5番の徳野友香さん「Drive-in HOTEL」も車に乗ったままチェックインするという点で同じ提案なんだけど、新築にて建築する(と読み取れる) 「Drive-in HOTEL」に対して、立体駐車場をホテルへリデザインする「立体駐泊場」の方が今回のテーマに沿っていて、推したいと考えた。もう一点は7番木村有里佳さんの「Le;Place」。ビジネスホテルの新しい展開、学習の場を兼ねるという考え方が学生らしく、またハード面だけでなくソフト面においても、一日単位のホテルを運営しながら一ヶ月単位の賃貸として借りられる利用方法が具体的に提案されていて面白いと思いましたね。他の作品に関していえば、皆さんいろいろ考えてくれてるんだけど、もう一歩具体性が足りず中途半端な感じがして、そこが惜しいなと感じました。

■辻仁成(作家、Design Stories主宰、審査員長)
面白いと思ったのは5番、徳野友香さんの「Drive-in HOTEL」と10番の荒木鴻歩さん「立体駐泊場」。コロナの時代、人と会わずにすみ、人との接触を減らず工夫を感じる。11番の森川ひかりさん「HOTEL gororis」はそのコンセプトは文学的で面白かったけど、作品にその思いが反映されてなく、デザインの域に達しっていないのが惜しいと思った。そんな中で僕が一番と思った作品は最終的に12番田中勝さんの「出会いのホテル」。今回のテーマに沿ったデザインではないかと思った。扉を開けば他者との関係が築け、扉を閉めれば遮断された個の空間となる。個人と全体とが一つの扉によって長屋のように分けられており、全て取っ払えば大きな一つの広場になったりする。閉めれば誰にも会わずにすむ空間となり篭ることも、人と触れ合うこともできる街。今、出会いを選択するという意味で、この作品はとても文学的でありその発想が面白く、とても興味深く思い、高く評価しました。
 

第4回アート&デザイン新世代賞・受賞作決定!

受賞作の紹介、受賞の言葉、選評などにつきましては近日DS誌面掲載予定の記事にてご紹介したいと思います。
そして、コロナの時代にあって、精力的にご応募くださった皆さま、ありがとうございました。お送りくださった作品はどれも、この時代を生き抜くための工夫やアイデアの詰まった若い世代の未来へ向けたメッセージが込められていました。受賞を逃した人も、一次通過できなかった人も、まだまだという人も、デザインの未来は皆さまの手の中にあります。小さな可能性も未来に続く道しるべです。どうぞ、その思いを大切に、これからも育てていってほしいと思います。

皆さま、たくさんのご応募ありがとうございました。

                     新世代賞事務局
 

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