某月某日、外出許可証を所持して前みたいに買い物に出たのだけど、どこがロックダウンなの、と驚くくらい物凄い数の人出、…。
車もがんがん走ってる。
買い物キャリーバックを引っ張りながら、一瞬、わが目を疑ってしまった。
「普通じゃん」

ぼくがパリを離れた直後、夜間外出禁止令が出て、その直後、ロックダウンになったので心配していたけど、ぜんぜん、ロックダウンというイメージからはかけ離れている。いったいどうなっているのか、スーパーの店員さんに聞いてみた。
「ようはね、老人の皆さんを守るために行われているロックダウンだから、生活は普通にできるし、官庁とか役所とかも普通にやってるよ」
「でも、ご老人の皆さん出歩いたら感染して大変になるのに、出歩いてる人の中におじいさんやおばあさんも大勢いてびっくり」
「でも、一日一時間という制限が意味あるんですよ。それだけでも行動半径を制限できるから、年配の人たちの感染リスクはぐんと下がる。経済を止めないで、感染を抑えるにはこの方法しかない」

よくわからないけど、学校は開いているので学生たちは屯しているし、タクシーも結構走っているし、病院とか歯医者もやってるので、生活は普通なのだ。
閉まっているのはカフェ、レストラン、美容院、書店とかの小さな店舗ばかり…。
息子が、意味のないロックダウン、と呼んでいたことを思い出した。
これで感染者数を抑えられればいいのだけど、昨日の感染者数は５８０００人まで増えている。
一日で６万人近い人が感染をしているのである。やれやれ。
「今回のロックダウン、成果が出るまでに３週間はかかるみたいすよ。だから、気長に向き合うしかないですね」
と先の店員さんが帰りがけにぼくに言い放った。
ぼくが後ろを振り向くと、ずらりと十数人くらいお客が並んでいる。
もう、慣れっこになったロックダウンという感じで、誰もコロナを恐れていない感が半端なかった。大丈夫なのか？？？

前のアパルトマンが窓やドアの工事をやるというので、様子を見に足を延ばしてみた。
工事業者が普通にドアの交換のための工事をやっていた。
感染拡大している感じではなかった。
自分の家に入り、必要なものをキャリーバックに詰めた。
日本で買ったお土産を上と下の階のドアにメッセージを添えてぶら下げておいた。(もちろん、消毒をして)
「ロックダウンなのに、工事とか出来るんですね」
「ぜんぜん、普通だよ。証明書持ってるから平気。工事止めたら、世の中終わるでしょ」

家を出たところで中国系フランス人のパトリックとばったり出くわした。
行きつけレストランの経営者である。
「久しぶり、どうしていたの？」
「日本に行ってたんだ。君んとこ、テイクアウトとかやってるの？」
「うちは閉めてる。どうせ儲からないし、開くとそれなりに多変なんだよ。だから、今年はあかんなって覚悟した。コロナが落ち着くまで持久戦って感じかな」
「大変だね。補償も少ないんだよね？」
「家賃にもならない。打つ手なしだよ。今年のクリスマスは暗いね」

新しいアパルトマンに戻る途中、走っている車が警察官にとめられていた。
とにかく、警官の数が凄いのだ。テロもあるから、二重で警戒しているのに違いない。
すると、目の前で、スクーターが停止させられた。
「ちょっと病院まで行くんですよ」
「外出証明書を見せてください」
「すぐ近くだから、ごめんなさい、忘れちゃって」
あらら、とぼくは思った。この人は罰金を払わないとならない。
１３５ユーロ、日本円で１５０００円くらいだ。気、緩み過ぎだろ？
立ち止まってじっと見ているぼくに気づいた警官に睨まれたので、そそくさをそこを離れることにした。

健康のための散歩は一時間一キロ以内だけど、買い物にマークしておくと、時間制限がないし、距離も自由なので、ぼくは一キロどころか、数キロ歩いてしまった。
アジア人食品店に行き、暇だから、いろいろと食材を物色したら、日清が凄いラーメンを発売していた。どうやら、棒ラーメンである。
でも、このくらいの緩いロックダウンで助かった。
日本の自主隔離よりもぜんぜん楽勝だった。
とりあえず、ランチはラーメンに決定である！　

※よくみたら、香港製造と書いてあった！！　とんこつとか味噌じゃなく、福岡風味、九州風味、北海道風味！福岡風味と九州風味の差はなに？？？