JINSEI STORIES
自主隔離日記「2021年のコロナを想像してみた、隔離部屋にて」 Posted on 2020/10/16 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、日本に入って、まだ出歩いてはいないけれど、日本のニュースなんかを眺めている限り、GOTOトラベルとか政府が海外渡航を緩める話しとか、欧州とは全然真逆な感じになっているのが興味深かった。
それより菅首相になっていて、安倍さんじゃないとはわかっていたけど、やっぱり海外在住者として日本で暮らされている方とは大きな温度差があるのだ、と改めて痛感させられた久々の帰国であった。
この間にぼくはパリで3月4月にロックダウンを経験し、また日本で自主隔離を現在経験中なのだが、この後、パリに戻ると夜間外出禁止令下(6週間になるらしい)というなかなか珍しい経験を持つことになる。
フランスでロックダウン、日本で自主隔離(プライベート・ロックダウン)、フランスで夜間外出禁止令(ミニ・ロックダウン)とロックダウン三昧の一年になり、泣ける。3,4,10,11月が行動制限にあい、一年の三分の一は牢獄にいるような感じである。
実は、来春フランスでは、予定されていたイベントが軒並み、延期とか中止が発表されはじめてきた。
これが欧州の現実である。
来年のオリンピックはぼくも心から楽しみにしているけれど、今、フランス人の頭の中にソレはない。
欧州各国人の頭の中にもソレはないだろう。
アメリカ人も、メキシコも、世界各国がそうだと思う。
そればかりか、フランスがミニロックダウンに突入したことで、秋のバカンス期を前に、欧州各国がこれに追随しそうな構えをみせている。
欧州は地続きなので、ここで、一気にコロナの拡大を防ごうとしてくる可能性がある。
さらに不安材料として、新型コロナにとってこの冬は活動期だ。
夜間外出禁止令が解除されても、そこからがコロナの活発気に入り、外出禁止が解除されれば再び若者たちが夜の街へ繰り出し、大騒ぎをするのは間違いなし、クリスマスなのだから!
ぼくの嫌な予想が的中してほしくはないが、年明け2021年1月もしくは2月、これまでにないほどの感染爆発の可能性もある。
それを見越して、すでに3月くらいまでのイベントが延期・中止に追い込まれているのじゃないか…。
日本は海外渡航を緩めない方がいいのではないか、と海外在住者でありながら、ぼくは提言させて頂きたい。
経済を優先するために、帰国者の自主隔離をやめる動きもあるようだけど、確かにこれはかなり苦しい隔離ではあるが、日本は島国だからこそ、成果はあると思う。
もっと不安なことを言えば、一度感染した人もまたコロナに罹ることが分かってきた。
ぼくの周りでも結構いて、再度感染をすると重症化する人も出ている。
一度目、軽症だったのに、二度目がほんとうに酷かったというのをよく聞く。
ぼくも少し前までは、早めに軽く罹って抗体を持ちたい、と考えていた。
でも、知り合いで罹ったのに抗体が消えている人が結構多い。
たとえば、感染を経験した4人の友人たちのうち、抗体検査をして、3人は抗体を持っていなかった。一人は消えかかっていると、医師に言われた。
コロナの情報に関しては、多少うさん臭くても、出来る限り多く収集しておくべきであろう。それを秤にかけて選択していくしかない。
さらには突貫工事で開発中のワクチンがどれほど有効か、何とも言えない。
医者や科学者は有効だというけれど、実はコロナ出現以降、科学者の意見は迷走を繰り返している。まだ、鬼ごっこは始まったばかりだというのが現状じゃないか。
治験をやめる製薬会社も出ていて、リスクも大きそうだし、何より、信頼性が低い。
そういうワクチンを接種して、何が起こるのか、あまりに怖すぎる。
トランプ大統領が選挙対策のために急がせて開発しているワクチンとか、…。
いずれ風邪みたいになるのだろうという楽観的な面もあるけれど、今はまだそういう状態じゃない。悲観と楽観のあいだ、である。
今日、ついにフランスの一日の感染者数が3万人を超えた。
夜間外出禁止令が出たが、来週は4万、もしくはそれ以上上昇するだろう。
外出禁止令の成果が出るのは少し先になると思う。
いつまでも封鎖は出来ないので、抑制と拡大を繰り返して人類は2021年を迎える。
その間に、アメリカ大統領選挙があるのだ! 目が離せない。
恐ろしいことが起きませんように!
この冬にどこまでコロナが勢いづくのか、これが最大の懸念事項だけど、ぼくは楽観的にはなれない。
春から夏にかけて、もう一度、封じ込めの何かをやるだろうが、その時はイギリスを含む欧州全体がタイミングを合わせて欧州同時封鎖もあり得るのじゃないか、と思っている。
その直後のオリンピック、どういうスタイルで開催できるか、最大限の知恵を出し合って考えていく必要があると思う。