欧州最新情報
パリ最新情報「つい手が出ちゃうフランス人、握手をしない挨拶あれこれ」 Posted on 2020/07/25 Design Stories
握手やビズ(頬と頬を合わせるキスのこと)といった体を触れ合う挨拶が当たり前だったフランス人ですが、手や飛沫から感染する新型コロナの出現でさすがにそれらの挨拶は避けるようになりました。今でも稀にビズをしている人を見かけますが、えっ!?と、何かダメなものを見てしまったような、そんな感覚にさえ陥るほど珍しい光景であることは確か。なので、それでもビズをする人たちというのは、おそらく親友や恋人同士、親子だとか、とても親密な関係の人同士なのだと思います。
「握手」という挨拶は、もともと、利き手を差し出すということで、武器を持っていないということを相手に伝えるために生まれたと言われており、なんと紀元前から続く大事な社会的習慣、エチケットです。今では仕事、プライベート共に初対面の人同士がまず行う大切な情報収集の一瞬でもあり、手の握り方一つで相手の印象を左右させるとも言われています。この「握手」がもたらす心理は科学的にも証明されており、それが無くなることで言葉なしで感じ取れる相手の「温度」を見逃してしまうことになる、と、懸念されていました。
そんなこのご時世、巷では新しい挨拶が少しずつ定着しつつあります。それが、肘と肘を合わせる「elbow bump (エルボーバンプ)」や拳と拳をあわせる「fist bump(フィストバンプ)」です。握手ができなくなっても、やっぱり顔馴染みの人と会うと反射的に近づき手が出てしまうフランス人たち。ちょっとはにかみながら、みんな楽しそうに肘や拳で挨拶をしています。
ドイツでは一昨日まで欧州連合(EU)の首脳会議が行われていましたが、そこで注目したのも欧州首脳たちの挨拶でした。ドイツのアンゲラ・メルケル首相はフランスのマクロン大統領が到着すると、胸の前に両手を合わせ合掌をしたのです。それにマクロン大統領も応え、合掌。確かに、公の場でいきなりエルボーバンプをするわけにもいかないと思いますが、合掌をし合う二人の姿はとても新鮮な光景でした。「合掌」は、インド起源の礼拝の仕草ですが、相手に誠実心や尊敬の念を表す仕草であるため、こういった公の場に適した挨拶であることは間違いありません。マクロン大統領はすでにロックダウン以降、何処かを訪問すると必ず合掌で挨拶をしていましたが、公式の場でのメルケル首相との合掌合戦を見ると、欧州でも合掌が新しい公式挨拶になるのかも?知れません。
公式の挨拶では合掌をしていた首脳たちですが、会議が進むと、次は各首脳同士が順にエルボーバンプをしている姿が映し出されていました。エルボーバンプをする首脳たちはみんな楽しそうで、場が和んでいることがわかります。このような会議では場を和ませることも大事なストラテジー。握手に代わる挨拶をTPOに応じて使い分けるのは、さすが欧州首脳たちだと感じました。
肘や拳の挨拶はちょっと・・・という女性には、英国王室で一般的な「カーテシー」と呼ばれる、片足を後ろに引き、一方の膝を軽く曲げる挨拶方法もありますし、ドイツの国防相は両手をクロスして胸をトントンと叩く独自の挨拶をされていました。今後、自分のスタイルに合った個性的な挨拶がたくさん生まれてくるのではないでしょうか。
今回のコロナ感染爆発には握手やビズといった欧州に昔から続く体を触れ合う挨拶が一因だとも言われ、対して日本人はもともと人と人が触れ合わない遠くからお辞儀の文化だから感染が少なかったのだとも噂されていました。しかし、欧州人は触れ合う挨拶ができないのはとても寂しいことだと感じているようです。これからどれくらいの期間、ビズや握手を避けなければいけないのかわかりませんが、もしかしたらこのまま欧州でも触れ合わない挨拶が定着してしまうかも知れません。