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滞仏日記「ロックダウンの罠にはまった父ちゃんの大失態」 Posted on 2020/05/21 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ロックダウンが始まった直後に「ロックダウンで家から出られなくなると、運動不足になり、食べてばかりになって太るから注意」という内容の日記を他人事のようにここにアップさせてもらった。ぼくはこの年齢にしてはや痩せているという自負があったし、バクバク食べる方じゃないのでどっかで自分は大丈夫という自信があった。あれから2ヶ月の歳月が過ぎた。その期間、息子は何を思ったのか「ダイエット」を続けていた。昼はきちんと食べるが、夜にパスタとか米をとらない、いわゆる「炭水化物抜きダイエット」である。ぼく以上に頑固なので、チャーハンとか作って出すと、怒られた。なので、息子の分もぼくはつい食べてしまったのだ。それに、ロックダウンは不安だったので、夜、仕事が終わってからぼくは毎晩晩酌をやった。飲むとなんか摘まみたくなり、チーズとかピーナッツに手が伸びた。そして、今日、息子がぼくのお腹を指さし「肉がついてる」と指摘したのである。やばくない? それ!



たしかに、なんか身体が重いはずである。腹部に手を当てると1月にはなかった膨らみがある。鏡の前で腹を掴んでみると、なんか、がいた。
「パパ、めっちゃダメじゃん」
「いや、まだ大丈夫だよ、じゃあ、一緒に体重計にのってみよう」
ということで、二人で体重計にのることになった。まずは息子がのった。最後に体重計にのったのが去年の暮れだと言った。「その時、僕は70キロだったんだ。今は…」針が動いて、止まった。な、なんと64キロであった。息子の顔がみるみる勝ち誇った顔に変化した。「やったー」と大騒ぎしている。2ヶ月、自分に厳しくダイエットを続けた息子の勝利であった。今度は僕の番である。ドキドキドキ。ぼくはロックダウン前、55キロだった。すると、針が動いて、58キロで止まった。あ、もうちょっと、動いてしまった。止まれー。58,5キロ。衝撃的な結果が出てしまった。息子はアフターロックダウンで6キロ減、ぼくは3,5キロ増になっていた。ここ10年で最高に太った。このままいくと、60キロの大台に達してしまうじゃないか。
「パパ、僕と一緒にダイエットやろう。今夜から贅沢な料理は禁止だよ。そして、禁酒、夜食抜き、ケーキ作るのも食べるのも禁止だ。パティシエじゃないんだから」
「ええ? ケーキ作っちゃダメなんかい?」
「それ、一人で全部食べるから、そのお腹になっちゃったんだよ」
「でも、そんなの無理でしょ? インスタに写真アップ出来ないじゃん」
「馬鹿じゃないの? インスタと体形とどっちが大事?」
「ロックンロール」
「あのね、昼間はちゃんと食べていいんだよ。でも、夜はサラダかスープにしよう。パパの場合、太った原因はワインとビールだから、お酒も控えよう。このまま食べ続けたら、もう歌えなくなるよ」
ということで、自分の腹を触って、納得したので、今日からダイエットをやることになりました。最後なので、ここ最近、ぼくが作った辻家のごちそうを張り付けておきます。お腹が気になる皆さん、一緒に頑張りましょう。てへへ。

※ロックダウンが始まった頃に書いた記事はこちら➡️ 退屈日記「ロックダウンの恐ろしい罠」



滞仏日記「ロックダウンの罠にはまった父ちゃんの大失態」

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