JINSEI STORIES

退屈日記「欧米人に比べ日本人はコロナに強い、を信じたい」」 Posted on 2020/05/15 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、エヴィデンスもないので、妄想というレベルで読んでもらいたい。香港の死者は今日までに4人、台湾は6人、韓国は250人くらい、日本は500人くらい、中国でも人口14億人に対して4600人程度、と欧米に比べると脅威的に少ない。アジア人ももちろんみんな罹るし亡くなる人もいるけれど、欧米人に比べると圧倒的に重症化しにくく、死亡する人の数が少ないことに、何か理由があるのじゃないか、と考えたくなるのは当然であろう。

ぼくと知人の哲学者アドリアンが議論を繰り返す中で一番可能性がある理由として、BCGを接種したかどうかじゃないか、ということに落ち着いた。もちろん、ぼくらは専門家じゃないので、話に何の説得力も無いという、立ち話程度の結論なのだけど、フランスの2万7千人を超える死者数や、イギリスの3万人、アメリカの8万人超えは、アジアと比較できない驚くべき数字である。アジア以外はだいたいどこも、感染の速度も死者数も大きい。なので、なぜ、アジアは少ないのかについてもっと研究をするべきじゃないか。武漢で感染が始まってから、当初は日本や韓国で広がりをみせていたが、死者数に関して言えば欧米のような急激な拡大をしない、なぜだ? 台湾や香港は封じ込めに成功した、韓国もロックダウンをしない独自の方法を開発した、などと称賛が続いているけれど、中国の死者数が事実であるならば、アジア人はもともと、欧米人にはないコロナに対する強さがあるような気がしてならない。アジア人の衛生観念の高さ、真面目さだけが原因とは思えない。



昨日、AERAの「BCGを受けた国、受けなかった国でコロナ死亡率が最大で1800倍の差がある」という大変興味深い記事を読んだ。「BCGワクチンが新型コロナに対する防御を与えているかもしれない」と結論づけたニューヨーク工科大の研究者の論文は確かに興味深い。はっきりとしたエヴィデンスはないものの、やはりなんらか強い相関性がある気がする。
人口100万人あたりの死者数はBCGの集団接種をしたことがない米国が227、イタリア490だそうで、広く摂取している日本は4.4人 韓国は5人 中国は3.2人と驚くべき程に低い。台湾は0.3人って、めっちゃ凄い。

フランスもBCGは義務化じゃないので、実は接種している人がまばらなのである。うちの子は幸いに摂取している。(日本のに比べると、かなり弱いものだが)でも、フランス人の大人たちの時代には義務じゃなかったので、接種してない方も多い。もしかしたら、そういうことが数字に差を生んでいるのかもしれない。

そこでいろいろと調べてたところ、オランダとドイツとオーストラリアでは、BCGとコロナの関係性について積極的な研究が始まっている。フランスでもパスツール研究所がこの点に注目し、「BCGが新型コロナに対してなんらかの有効性があるのは分かって来た。重症化への確率を減らすのじゃないか」という結論を導きだし、医療従事者に接種を試験的に打ってみたい、とフランスの保健所に申請中なのだそうだ。他の欧米の研究機関でもBCGとのかかわりについて研究が始まっているというので、朗報を待ちたいところだ。つまり、感染の予防にはならないのだけど、重症化を防ぐなんらかの可能性があるのじゃないか、という捉え方である。とにかく、研究は続けてもらいたい。

退屈日記「欧米人に比べ日本人はコロナに強い、を信じたい」」



フランスの健康メディア「サンテ」が面白い記事をだしていた。子供が重症化しないのは、BCGの摂取が理由じゃないだろうか、というもの。年配の方に重症化した人が多いのは、このBCGの期限切れみたいなことも考えられるらしい。40年ほど経つと効力がぐんと減るという研究結果も出ているというのだ。ということは、ぼくが接種したのは40年ちょっと前に遡ることになるので、もしかしたら、もう効かないの? 罹ったらやっぱり重症化するのかなぁ…。 さあ、この辺は神頼みということで、笑。

BCG有効性はさておき、変異力が強い新型コロナなので、どちらにしても、警戒感を緩めてはならない。日本は、39県の緊急事態宣言の解除が決まったけど、フランスでもロックダウン解除した途端のクラスター増え、ここからが個人個人の衛生観念の持ちようということになる。いわば、個人自粛の時代に入るのだ。用心しながら、様子をみて、自分だけは罹るものか、と社会的距離を保って引き続き、強い決意で生きられたし。