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退屈日記「ステイホームの今だから、絵本を子供たちに読み聞かせる」 Posted on 2020/05/11 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、緊急事態宣言下のステイホームのこの期間、家から出られない小さなお子さんたちは退屈していますね、きっと。ここはお母さんが、もしくはお父さんが、ご家族が、絵本をお子さんに読み聞かせをする「いい機会」なのです。読み聞かせることでお子さんにダイレクトに愛情を届けることもでき、また、不安なこの時期を親子一緒に暖かい気持ちで乗り切ることも出来るでしょう。そんな、そんなタイミングの今、俳優の寺島しのぶさんが、ぼくが翻訳をした絵本、「ママの小さなたからもの」(Astrid Desbordes,Pauline Martin作)をご自分のお子さんに読み聞かせをしてくださったという知らせが届きました。版元の早川書房さんから動画を送られてきたので、このステイ・ホーム期間に、お子さんとお母さんでごらんになってもらえたらうれしいです。これは読み聞かせの参考になりますし、このまま、動画をお子さんに見せることもできます。寺島しのぶさんとお坊ちゃんに感謝です!



退屈日記「ステイホームの今だから、絵本を子供たちに読み聞かせる」

さて、2011年7月11日、震災からちょうど4カ月目の日、突貫工事で作った絵本「ラペのくにでは」をぼくは福島の放射線量が高くて校庭の土を入れ替えざるをえなかった三つの幼稚園に届けました。そして、スタッフと紙芝居を制作し、子どもたちの前で読み聞かせしたのです。福島大学附属幼稚園 (園児数65名)三育学園 三育幼稚園 (園児数200名)聖心三育幼稚園 (園児数71名)全部で335人の園児たちでした。外で遊ぶことのできない子どもたちが本当に、本当に喜んでくれたのが忘れられません。おっと、あの子たち、もう中学生くらいなのかなぁ。幼稚園の先生たちが泣いていました。すばらしい絵を描いてくださったのは、ひらおかおりさんです。ひらおさんに感謝です。

退屈日記「ステイホームの今だから、絵本を子供たちに読み聞かせる」



退屈日記「ステイホームの今だから、絵本を子供たちに読み聞かせる」

あの時、福島の小さな子たちは何が起こったのか、あまり分かっていなかったと思いますが、大人が不安の中にいるのはわかっていたと思います。だから、子供たちの中に飛び込んで、笑顔で朗読をさせて頂きました。自分の子供に読み聞かせるみたいに。きっと、新型コロナ禍のステイホームの今も、ちっちゃなお子さんたちはなんか変だな、と思っていると思います。この不安を払しょくするのに、絵本の読み聞かせはとっても役立ちます。ぜひ、やってみてください。コツなんか、ないんです。どんな読み方でも、家族が読んで聞かせてあげれば、大丈夫。気恥ずかしいことはありません。ぼくも父ちゃんですから、二人切りの生活がスタートした7年前、絵本を持って子供部屋に行き、息子の横で読み聞かせをしました。いろいろな本を、読んであげたのです。もちろん、「ラペのくにから」も。この絵本は、怖いことがあって眠れないこどもたちに、夢の中には楽しいことがたくさんあるよ、ということを伝えた絵本です。夢の中には自由に遊びまわれる広場があるよ、と伝えた絵本でした。寝るのが楽しくなるような、すやすやぐっすり眠れるような絵本を作らせてもらいました。きっと、うちの子は忘れていると思います。今、そんなこと言うと、キモイ、と言われそうだから、言いませんが、その時、ぼくは彼が寝付くまで、横で絵本を読んでいたのです。10歳だった息子ももう16歳になりました。その一時期、彼の幼い心に絵本が届けた安らぎがありました。新型コロナ禍の今、ご家族の愛をお子さんに。

退屈日記「ステイホームの今だから、絵本を子供たちに読み聞かせる」

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