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パリ最新情報「微かながら明るい兆しの一方、もう一つのコロナ戦争」 Posted on 2020/03/31 Design Stories  

ここにきて、明るい兆しが欧州に射してきた。イタリアではこの2日間、感染者の数が前日を下回っている。感染拡大ペースが低下しつつあるというのだ。1日当たりの感染増加率は約4%、一月前の62%から大幅に低下している。英国の科学顧問も外出制限が効果を出しつつあると指摘。英国の研究チームは「欧州各国より最大12万人の命が救われる」という分析結果を出した。フランスでは昨日400人を超える高い死者数を出したが、集中治療率に運び込まれる人の数が僅かながら抑えられつつあるという報道があった。(※ロックダウンの目的は医療崩壊を防ぐために、集中治療室に運び込まれる患者の数を押さえることが一番の目的である)フランスでは4月の中頃までにピークを迎えることになりそうだと保健当局のジェローム・サロモンが告げた。

パリ最新情報「微かながら明るい兆しの一方、もう一つのコロナ戦争」



その一方で、マスク不足が深刻なフランスに中国からマスク800万枚が到着した。昨日500万枚超が到着したのに続いて2日連続の出来事だった。世界一の死者数になったイタリアには人工呼吸器が送られ、イギリスには中国から医師団が到着した。一方で、昨日のフランスのCNEWSで中国の死者が実際の数字とは異なって数倍多いのではと疑う現地からのレポートが放送された。フランスのラクロア紙によると、武漢周辺の死者数が2535に対し市民に返された骨壺は同地区だけで5千口あったと報じた。

同じくイギリスの新聞メール・オン・サンデー紙が英国の科学者たちがジョンソン首相に「中国の実際の感染者数は最大で40倍と報告」と報じた。ジョンソン政権は「中国はウイルスと戦う国々に支援を提供することで自国の経済的な支配を拡大させようとしていると批判している」と同紙は締めくくった。同じくアメリカの国務長官も「中国の隠蔽行為」を批判、とロイターが報じている。(※イタリアやスペインやアメリカの死者数が中国を抜いたという報道の仕方は、そもそも各国の感染者数の検査方法がバラバラなので、同一分母として比較することに無理を感じる)

ウイルスとの戦いに苦しむ世界各国に手を差し伸べる中国、その中国を批判しつつも、中国からのマスクや人工呼吸器を取り寄せないとウイルスとの戦いに勝てない国々という新しい力関係が出来つつあり、とくに東南アジアにおいてはインドネシアなどのかつての親日国が中国寄りに舵を切りだしてもいる。さらには今後感染が急拡大するとみられるアフリカでの中国の影響力が強まりそうだ。世界はそれどころではない欧米から離れ中国を必要とすることになるのだろうか。湖北省武漢で発生したウイルスはCOVID-19という名称をWHOより与えられ、中国の報道官は米国が発症地と発言し、そこにロシアのメディアまでもが便乗し、その製造元は欧米とする報道を加熱させている。コロナ戦争と呼ばれている人類対ウイルスの攻防戦の裏側で、終息後の覇権を争うもう一つのコロナ戦争が勃発しつつあるのが現状である。

フランス政府では中国の手助けを必要としながらも、脱中国の動きが生まれつつある。中国を世界の工場と位置づけてきたこれまでの路線を変えようという流れだ。今後もこのような事態に直面した時に自国内での生産力では戦えないという不安が生まれ、保護主義を警戒しつつも、フランス国内生産力の回復に努めるべきだという主張があちこちから出ている。この運動は隣国、イギリスでも顕著で、ジョンソン首相は中国大手のファーウェイによる英国へのインフラへの参入を早急に見直す必要がある、と述べた。この新型コロナウイルスによるパンデミックの終息後、中国を必要とする国、中国の侵入を極めて警戒する国との対立が鮮明になるだろう。人類は一致団結してこのカタストロフに立ち向かわなければならないこの瞬間にも、次の時代を見据えての経済や政治を巻き込んだ激しいデッドヒートが繰り広げられている。



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