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パリ最新情報「果たしてマスクはどこまで有効なのか?」 Posted on 2020/03/22 Design Stories  

フランスではマスク不足が現在最も深刻な問題となっている。国民がマスクを自前で作り出すなどの行動に出始め、中にはアイマスクを口にしている人まで見かけるようになったが、専門家は「気休めにしかならない」と報道番組などで警告している。市販されているマスクも、陽性患者が飛沫をまき散らさないために着けるのには有効、今はマスクの買い占めに走らないでそれを最も必要とする医療関係者に回してほしい、外出時は人との距離を一メートル以上開けることの方が大事である、と専門家は繰り返している。医療関係者や高齢者施設でのマスク不足は深刻で、病院によってはマスク泥棒も多発しており、医療従事者はそのような不安の中で仕事を続けている厳しい実情がある。その上に、医療従事者以外でも、ごみ収集業者、郵便局員、スーパーレジ係、警察、運送業者などの団体が強くマスクを要求している。現在、このマスク不足が一番深刻なフランスの国内問題である。

パリ最新情報「果たしてマスクはどこまで有効なのか?」



マスク着用議論は世界各地で繰り返されている。市販マスクの多くがコロナウイルスを通過させてしまうという意見もあるが、感染症の学者が、国民の60パーセント以上がマスクを平時で着けていれば、感染症の拡大を防ぐ大きな効果に繋がる、とも語っており、マスクを日常的に着けてきた日本人にとっては朗報かもしれない。日本での爆発的な感染拡大を抑制している一つの効力になっている可能性もある。

21日、オリヴィエ・ヴェラン保健相が国民に向け、マスク不足の現状とマスクを求めるフランス国民への説明に追われた。マスク不足は深刻で、このことについて政府への批判も噴出している。保健相の説明要点として、「フランス政府は現在、2億5千万枚のマスクを国内外に発注している段階であること。納品され次第、医療従事者並びに高齢者の施設に優先的に配布する予定であること。フランス国内で毎週2400万枚のマスクが消費されているが、現状、国内の生産能力は600万枚程度しかなく、来月には800万枚まで増産させるよう努力しているが、それでも追い付かないの状態にある」と語った。

このマスク不足に関してジャーナリストなどから、「なんで今頃、マスクが無いと慌てているのだ」と政府対応のまずさを指摘する声が相次ぐ中、国は、「陽性患者が出始めた初期の段階で、マスクを国外(中国と台湾)に依頼したが、その時点で中国の感染拡大が深刻期に入り、マスクの注文はしたが実質出来ない状態となった。また国内での生産能力は、(元々マスクを着けない習慣にあるフランスなので)本当に限られたものしかなかった」と説明をした。中国への依存度の強さがフランスの政府を今、揺さぶっており、国内の保守勢力から今後は脱中国化を目指すべきではないか、という意見も出始め、これが新たな論争に発展している。

数日前の報道番組で医療関係者が「フランスはテキスタイルの国なのに、マスクを自前で作れないことが情けない」と訴えていたのが印象的だったが、ファッションメーカーの最大手、LVMHが世界的なネットワークを駆使して1000万枚を調達して寄付することを決めた。さらにLVMHとクリスチャン・ディオールの両ファッションメーカーは自分たちの香水の生産ラインを使って消毒ジェルをすでに16日から作り始めている。

パリ最新情報「果たしてマスクはどこまで有効なのか?」



続けて、オリヴィエ・ベランは新型コロナのPCR検査についての現状を国民に説明した。
「現在、国内には一日4000人のPCRテストをする能力しかなく、今までは症状のある人とその人たちと濃厚接触をした人の検査のみを行って来た。コロナ感染が確認されてから現在までに6万人しかテストがされていない。外出制限が解除される前に、国内外の業者と提携して大規模なPCR検査が出来るよう政府は準備を進めている」
ということは、6万人の検査をした中で、今日現在1万5千人の陽性患者が見つかったということであり、検査をしていない人の中に物凄く多くの感染者がいるということかもしれない。オフィシャルな感染者の数字は21日現在、14459人(前日比1847人)、死者562人(前日比112人)入院は6172人、うち重症者が1525人である。

現在、世界中で9億人もの人が外出制限下におかれている。この深刻な状況の中、フランスでは来週月曜日に専門家会議が開かれ、外出制限をどの程度延期するのかを話し合い、決めると保健相は伝えた。外出制限がさらに延長されることは免れないようである。外出制限の効果が出るまで状況は今よりも悪化するだろう、と保健相は付け足した。

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