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パリ最新情報「スターパティシエと普段着のお菓子のお話」 Posted on 2020/01/26 Design Stories
もうすぐ、バレンタインデーである。ちょっと前まではバレンタインデーを祝うことなどなかったフランス人、しかしここ数年、日本と同じくらいバレンタイン商戦が目につくようになった。そして、この時期、パリの人々の関心もチョコレートやパティスリーといった”甘いもの”へと向かう。2月のパリはショコラティエやパティスリーが賑わうのである。チョコレートと言えば、個人的にはジャック・ジュナンがフランス一のショコラティエだと思っている。ここのチョコレートは異次元の美味しさで、口に入れた時の感動といったらない。中でもギモーブのチョコレートがけは隠れた人気商品。年中置いているわけではなく、1月半ばから店頭に並ぶ。ギモーブとはマシュマロのことだ。淡雪のような柔らかさので、優しく掴まないと壊れてしまう、そういう繊細なお菓子である。
フランスの甘いもの屋は、パティスリー(ケーキ)屋、チョコレート屋、そしてパン屋に別れる。パン屋に売っているのはパンだけではない、日本の肉屋でポテトサラダが売られているように(笑)、フランスのパン屋のショーケースにはケーキが溢れている。でも、侮るなかれ、お店によってはお菓子の方が人気のあるパン屋さんもあるのだ。
さて、菓子職人のことをパティシエというけれど、その中でもメディアで取り上げられるほど超人気のパティシエは「スターパティシエ」と呼ばれている。その「スターパティシエ」というカテゴリーを定着させたのはクリストフ・ミシャラクだろう。フォション、ピエール・エルメ、ラデュレを経て、26歳でパレスホテル「プラザ・アテネ」のシェフパティシエに就任したツワモノ。パティシエ世界選手権にフランス代表チームのキャプテンとして出場し、優勝を成し遂げている。それをきっかけにメディアに露出するようになった。イケメンで、話もおもしろく、お菓子を作らせたら世界一。人気がでないわけはない。
そんな、元祖スターパティシエ、クリストフ・ミシャラクの作るお菓子はポップでありロック。常に従来の伝統的なフランス菓子とは一味違う世界を創り出している。「KOSMIK」という容器に入ったシリーズは、崩さずきれいに持ち運べるよう考え出された新しいカタチのお菓子で、パティスリーではあまり見かけないムースオショコラなども味わえる。
甘いものに目がなく、街を歩けばそんな有名パティシエの店に出くわしてしまうパリだけれど、とはいえ、1つ1000円ほどするスターパティスリーを食べるほどの余裕はない。近頃はパティシエ界も料理界と同じく、勝負菓子だけではなく、気軽に食べられる普段着のお菓子を提案する店が増えてきた。
パウンドケーキなどの素朴な焼き菓子はある程度日持ちもするし、大人数で食べることも出来るので経済的である。人気パティシエ、ヤン・クブラーのマーブルケーキを頂いてみたが、これがとても美味しかった。しっとりとしたマーブルケーキがチョコレートでコーティングされていて、生クリームを泡立てて載せると立派なデザートにもなる。
タルト・トロペジエンヌも普段のお菓子にぴったりだ。南仏のサン・トロペが発祥のタルト・トロペジエンヌは、ブリオッシュ生地にクリームがたっぷり入ったお菓子。中でもスターシェフのティエリー・マークスが運営するパン屋で売られているトロペジエンヌはブリオッシュとクリームのバランスがよく、思わずパクパク頬張ってしまう。有名シェフがセカンドショップ感覚で経営するパン屋のお菓子はねらい目なのだ。高級菓子だけがパリの名物ではない。普段着のお菓子が今はホットでねらい目なのである。
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