PANORAMA STORIES

雨天曇天Melbourne「クワイエット産婦!」 Posted on 2020/01/19 ムラカミ ネハン 漫画家 メルボルン

雨天曇天Melbourne「クワイエット産婦!」

いつの間にやら元号までチェンジして、オールレディ2020年!
「出産inオーストラリア」の出産編マンガを描いてからいつのまにか赤子は2歳のトッドラー(幼児)に
早い、早すぎる…! マジで「タイム・イズ・フライイング」、「光陰矢の如し」…。

「私は子供が産まれても『母』ではない『自分』を失わないゾ☆」なんて思っていたけれど、頑張って『自分』をキープしようとして、真っ先に失われたのは悲しいかな『体力』

産後は毎月のように風邪をひき、原因不明の咳が数ヶ月続き、激しい肩こりに悩まされ…という日々を経て、限りある24時間の中から『体力』をキープするために『自分』の優先順位はずるずるとダウン・トゥ・アース(意味チガウ)。そして「海外育児ライフをマンガでバリバリ描くゾ☆」という意気込みも南半球の海の藻屑…。



もちろん「育児なるものはきっと大変であろう」という予想はワタクシにも人並みにありました。とは言え「海外で」「英語ができないフーフが」「見切り発車で始めた育児」はまるで「ステージ1で村人と会話しようにも村人の話す言語が分からないRPG」並みのムボーさだったこと気づいた時にはもう後のフェスティバル(byルー大柴)。

子供がいない時代は英語ができないって言っても、日常生活の外出は仕事(日本語環境)とスーパー(セルフレジ)のみ、プライベートは引きこもり(ダンナシは日本人)だから全くの無問題! 何かあっても基本ググって下準備をする「石橋叩き戦法」で切り抜けてきたワタクシ。

しかし帝王切開後、麻酔が切れてぶるぶる震えて目覚めた瞬間から、ケータイでググる余裕などはない日々が容赦なくスタート。

数時間置きに入れ替わり立ち代わり来るナース達に帝王切開の痛み止めはどれが必要か聞かれ、お便の様子を聞かれ、出ないなら下剤を出すから飲めと言われ、乳の出具合をチェックされ、授乳の体勢やらなんやらのアドバイスを貰い、結局乳がほとんど出てないことが判明し、なぜもっと早く言わないのかと責められ、足りない分は追加でフォーミュラ(液体ミルク)を足せと言われ、授乳以外でもパンプ(搾乳器)で乳を取れ、と両乳同時搾乳ができるハイパーなマシーンを貸し出され、etc、etc…

雨天曇天Melbourne「クワイエット産婦!」

術後のボロボロの体にムチ打つように次から次へと繰り出される質問は、もちろん今までの人生でお目にかかったことのない英単語だらけ。何を聞かれてるかは“sorry?”と何度も聞き返して雰囲気で判断、とりあえずYESかNOで返事してみて予想と違ってたら次のナースで訂正、というイチかバチかの緊張感溢るる入院生活with赤子

「他に何かリクエストはあるか」と聞かれても、yes/noの返事だけでいっぱいいっぱいなので、ひたすら「OK、OK!」とOK牧場と化していたら、ナースの引き継ぎで「この人本当にクワイエットだからちゃんとケアしてあげて」と言われてるのを耳にしてyouはshock(by北斗の拳)。

日本語学校の仕事では一応学生を相手に日々丁々発止している(つもりの)自分を形容する言葉に「クワイエット」という単語がくるとはよもや想像だにしていなかった…。そしてそこで初めて「そうか、他の産婦はもっと色々ナースに聞いたり相談したりしてんだな!」という気づきが…。

しかし私は仮に気になることがあっても、まずは日本語でググって調べる→そして英語翻訳を調べる→様子を見る→それでもダメなら話そうぜ!という手順を踏まずには何もできない丸腰のサムライブルー

雨天曇天Melbourne「クワイエット産婦!」

結局は「クワイエット産婦」の汚名(?)は返上できぬままに入院生活は終わりを告げたのだけれども、ウチに帰れば質問責めにあうことなく、自分のペースで育児できるんだろうなと思っていた私はソー・スウィート

その後にはベイビーの健診訪問とマザーズグループという更なる恐怖が私を待ち受けていたのです…。(つづく。)

Posted by ムラカミ ネハン

ムラカミ ネハン

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Nehan Murakami
漫画家。海外留学経験ゼロ、英語もほとんど話せない状態で2008年にオーストラリアはメルボルンへ。以来、日本語教師として教壇に立ってはいるものの、今だに英語は大の苦手。前職は全く畑違いの結婚式の音響スタッフ。ネコ中毒。Twitter:@murakami_nehan