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リサイクル・料理教室「キッチンは裏切らない。寂しくなったらキッチンへ」 Posted on 2024/07/20 辻 仁成 作家 パリ

ご存じだと思いますが、笑、ぼくは仕事場にいるよりもキッチンにいる時間の方が長い。
行きつけのマルシェで旬の食材を買い込んで昼晩と2食作っている。朝はカフェで・・・。
かつては息子のためにお弁当を毎朝作っていたが、その子も巣立ち、三四郎がやって来て、ますますキッチンから出なくなった。あはは。ひきこもり?
料理をしている時間が好き過ぎて、いわばそこはぼくの逃げ場と化している。
そして、ぼくの携帯には、日々、腕をふるってこしらえた料理の写真が次々とストックされていくようになったのであーる~、めでたし。
まずは、その作品たちを、ちょっと、ご紹介しましょうかね・・・。

リサイクル・料理教室「キッチンは裏切らない。寂しくなったらキッチンへ」

秋から出回りだし、今の時期でもまだ美味しいジロール茸を、エシャロットと炒めてクリームのソースを作り、仔牛のエスカロップ(薄くカットした肉)をポワレし、上からかけて食す。
バターは使わない。
バターを使うと全部バターの風味に負けてしまうからだ。
仔牛から出る肉汁だけで十分に濃厚な味わいとなる。
これが、クリーミーでとっても美味しい。
ノルマンディ地方は、こういうクリーミーな料理で有名なので、この手の料理を「ノルマンディ風」という。

リサイクル・料理教室「キッチンは裏切らない。寂しくなったらキッチンへ」

田舎に行くと、作るのが、こちら。
砂浜で早朝に拾ったアサリを砂抜きし、ニンニクとパセリでワイン蒸しにし、タリアテッレにからめた一品。
白ワインとの相性が抜群である。
田舎のアパルトマンからすぐの浜辺ではコックと呼ばれる小さめの貝がごろごろととれる。ま、アサリには負けるけど、コックでも美味しい。アサリはカモメに食べられてしまうので、人間は残りものをアサリます、笑。しゃれ。
カモメが群がっている辺りに行けば、そこが漁場となる。
美味しいものは鳥に聞け。

リサイクル・料理教室「キッチンは裏切らない。寂しくなったらキッチンへ」

野菜がぼくは大好きだから、ラタトゥイユがけのカッペリーニもたまに作る。ただし、夏場に作ることが多いかな・・・。
コツは野菜を一つ一つ別々に手間がかかっても炒めること。
これがラタトゥイユを作る最大のコツである。
時短が味を台無しにするので。ぼくは丁寧に丁寧に料理する。
そうすることで野菜たちが生きる。つまり、美味しいのであーる。

リサイクル・料理教室「キッチンは裏切らない。寂しくなったらキッチンへ」

行きつけのマルシェで手に入れる新鮮なイカをパセリと酒蒸しにした。
ワイン蒸し、酒蒸し、どちらもよくやる。
唐辛子が重要なアクセントになる。
これを焼きたてのバケットで食べる。残ったソースにバケットを付けて、一滴も残さずに胃におさめるのがよい。

リサイクル・料理教室「キッチンは裏切らない。寂しくなったらキッチンへ」

夏の暑い季節になると、登場するのが、海老のレモン風味パスタである。
エビを蒸して冷蔵庫で冷やし、たっぷりのレモンとミントとあわせる。
冷たいレモンクリームパスタは食欲がなくてもつるっと食べきれてしまう。
欧風版蒸し海老の冷やし中華と呼んでおる。

リサイクル・料理教室「キッチンは裏切らない。寂しくなったらキッチンへ」

それでは、ここで、父ちゃんのレシピをご披露したい。
今日は豆ごはんと茄子田楽である。
え? ここまで紹介した料理とぜんぜん、違うじゃないかって!?
和風、洋風、いろいろと作るけど、どの料理にも父ちゃん流の一本筋の通った情熱があるのだ。
それは、丁寧に作ること。

フランス人も茄子はもの凄くよく食べるが、日本風の食べ方は知らない。
だから、仏人の客が我が家に来る時に、必ず出すのがこちらの茄子田楽なのである。
これはフランス人にかなり受ける。
欧州人は茄子を食べる風習があるので、彼らにしてみると食べやすいうえに、新しいテイストだし、甘い料理が好きだからね、トレボン(めっちゃ美味しい)と褒めてくださる。
ちなみに、豆ごはんは、理解にちょっと苦しむようだ。
味が薄すぎて・・・あはは。

加茂茄子に似た(たぶん、元は日本から入った茄子だと思う)みずみずしい茄子をマルシェで手に入れることが出来る。
でも、フランス人は田楽を知らない。
ぼくはたまに親しい友人らに、豆ごはんと茄子田楽を作ってふるまう。彼らの驚く顔といったらない。
それでは、付録として、豆ごはんと父ちゃん風茄子田楽の作り方をご紹介したい。
ぜひ、お試しあれ。

<茄子田楽>
材料:ナス1本、味噌大さじ1、酒大さじ1、みりん大さじ1、水大さじ1、砂糖小さじ2
作り方。フライパンを熱しサラダ油(大さじ1)をひき、3センチくらいの厚さに切ったナスを焼く。中火でじっくり火が通るように焼き、きれいな焼き色がついたら裏面も同じように焼く。小鍋に味噌ソースの材料を入れ、火にかける。沸騰させ、良く混ざったら火からはずしておく。焼けた茄子の上に味噌ソースをのせ、ネギとゴマをふりかけて完成。

<豆ご飯>
材料:米1合、もち米1合、えんどう豆100g、昆布5cmほど、塩小さじ1、酒小さじ1
作り方。米ともち米を洗い、ざるに上げておく。お鍋に水2カップ半と塩小さじ1を沸騰させ、えんどう豆を入れて5分茹でる。
茹で上がったら火を止め、昆布を投入し、そのまま冷ます。
えんどう豆の茹で汁が冷めたら炊飯器に米と一緒に分量をいれ、普通炊きにする。炊きあがったら、先の茹でたエンドウ豆を入れ、なるべく豆が壊れないよう、よく混ぜる。ぼくはこれに茹蛸を小さくカットしていれたりもする。実に美味い。

どんな時代であろうと、キッチンは裏切らない。
ボナペティ。

リサイクル・料理教室「キッチンは裏切らない。寂しくなったらキッチンへ」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
キッチンは裏切りませんよ。いろいろと寂しい人生な時もありますが、気持ちをリフレッシュして、ご自分のために料理と向き合ってみましょう。おいしければ、元気も再び出てまいります。えいえいおー。

リサイクル・料理教室「キッチンは裏切らない。寂しくなったらキッチンへ」

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