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リサイクル日記「好奇心こそがぼくの生きる動機なのである。マジです!」 Posted on 2022/09/07 辻 仁成 作家 パリ

 
某月某日、朝起きてすぐにパソコンに向かう。僕にすると脳のウォーミングアップみたいな感じになる。
今日は何を書こうかな、と考えながらパソコンに向かう。あえて、書くことを決めないで、キーボードに向かってることの方が多い。

早起きは三文の徳的な作業で、時空は過去へと接続されたり、僕の前に広がる壁に懐かしい光景が広がったりもしている、…
これをやっつけてから飲むコーヒーがまた美味い。
その後は、小説やエッセイなどの本作業へと移る。

太陽が昇りだしてから昼食までの間が僕の脳みそがフル回転する、一日で一番躍動的な時間帯となる…。
昼食時にも、結構、飲むので、その愉しみのために、明け方頑張る、という仕事の仕方である…
この頭の運動のおかげで僕はあまり老いていくという実感がない。
あと「基本バカ」というのも幸いしている。馬鹿さと若さは似ている。えへへ。
マジです。

リサイクル日記「好奇心こそがぼくの生きる動機なのである。マジです!」



なぜ大学は18歳から22歳くらいまで、と決まっているのか、と最近よく疑問に思う。
大学を卒業したら(というか高校卒業後かな、日本の場合は)みんな勉強をしなくなる。
たぶん、かつて人間の寿命は短かった。大学が広く世界に普及しはじめた時代、当時の人間の寿命を想像すればその答えはおのずと出てくる。
今なんかよりもうんと早く死んでいたので、若いうちに大学に行った、が正解であろう。

ならば、現代、人生100年時代、と言われているこの21世紀なのに、変わらず18歳から大学生というのはちょっと奇妙じゃないか? 
奇妙である。
僕はむしろ、大学を退いてから勉強するようになった。
文学も映画も音楽もすべて独学だ。
映画は編集まで自分でやれるようになった。
音楽はだいたいの楽器を弾けるし、アレンジやプロデュースもやってきた(本業じゃないけど)。
しかし、今もその学習は続いている。

ぼくの仕事はオール100%辻なので、ぼくが死んだらそれで終わる仕事かもしれない。
後継者はいない。えへへ。

で、今日、この日記に記したいことは、人間は生涯勉強を続けた方がいい、という結論である。
勉強をやめた時に人間は老いるのだとぼくは悟った。
マジです。えへへ。

なぜなら、学ぶということは好奇心を伴うもので、知りたいということは若いからできることで、何かをはじめたいという気持ちが、おそらく、人間に生きる力を与えている。



人間にとって一番大事なことは生涯学び続けることのできる環境と志じゃないか、とぼくは思う。
それは月へ行くことにも負けない冒険であろう。
お金持ちになるとなぜかみんな宇宙を目指そうとするけど、お金持ちじゃないぼくらは素晴らしい本のページを興奮しながら捲ることができる。
もしくはその本を書くことも出来る。
素晴らしい音楽をヘッドフォンで聞けばいい。素晴らしい映像を最新の技術で見つめたらいい。
なんなら、監督作品だって、作れる。
マジです。

そこには莫大なお金がかかる月世界旅行にも負けない広大な想像的宇宙が広がっている。
ぼくは空想力で何度も月に行ったことがある。
マジです。
ぼくは生きている限り好奇心を持ってこの与えられた生をしゃぶりつくしたいと思っている。
それが「生に浸る」運動である。
一生学び続けることで人間はより高い豊かさを手に入れることが出来る。
だからこそ、ぼくは大人になってから勉強をしなさい、と言っている。
学んで知らないことを知った時の感動が人間を若くさせるからだ。
面白くさせる。
脳は筋肉と一緒で鍛えれば応えてくれる。
ほったらかしにすると恋人と一緒で消えてしまうものなのだ。
マジです。

ぼくは60歳を過ぎたけれど、世界はコロナ禍だけれど、学びたいこと、はじめたいこと、創作したいことが無限にあるので、この日々には意味があり、意義が宿っている。
好奇心こそがぼくの生きる動機なのである。
マジです。
 

リサイクル日記「好奇心こそがぼくの生きる動機なのである。マジです!」



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