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フランスで子育て「日本とフランスの違い 新生児連れで外出」 Posted on 2018/10/13 尾崎 景都 日本語教師 パリ

早いもので、我が子ももうすぐ一歳になる。
妊娠中は日本の育児書をよく読んでいたのだが、結局すぐに読まなくなってしまった。日本とフランスでは子育てに対する認識に相違がありすぎて、日本の育児書はほとんど役に立たなかったからだ。
パリでは、一ヶ月にも満たないのではないかという赤ちゃんがちょこんとベビーカーに収まっている姿を時々見かける。こちらの小児科医に質問しても、駅やデパートなどの大勢の人が集まる空間を避ければ、特に問題ないとの返事。日本の育児書には、最初の一ヶ月は一切家から出さず、一ヶ月が経ったらベランダに出てみましょう、その次は五分程度の外出から、と書いてあったので、この違いには驚いた。
 

フランスで子育て「日本とフランスの違い 新生児連れで外出」

フランスで子育て「日本とフランスの違い 新生児連れで外出」

確かにパリの街は赤ちゃん連れに優しい。例えばバスにはベビーカー優先スペースがあり、ベビーカーでバスに乗ると、乗客みんながその場所をサッと空けてくれる。子供がぐずると、近くにいる乗客があやしてくれるということもよくあり、こちらとしては大変ありがたく、温かい気持ちになる。
では外出中に赤ちゃんが授乳をせがんだら、オムツが汚れたらどうするのか。生後すぐはまだまだ頻回授乳や頻繁なオムツ交換が必要な時期。更にフランスには、日本のような授乳室やオムツ替え台が完備された施設が非常に少ない。
答えは簡単。赤ちゃんが欲しがったタイミングでおっぱいをあげるだけ。レストランでランチをしながら、公園でひなたぼっこをしながら、フランス人ママは躊躇なくおっぱいをあげる。一応着ている服でなるべく隠そうと努力しているママは少なからずいるが、授乳ケープもなし。オムツ替えに関しても、ベビーカーの上、パパの膝の上、公園のベンチの上。取り替えることのできるスペースがあれば、そこが「オムツ台」になる。ストレスを感じるのが大嫌いなフランス人らしい解決法であった。
 

フランスで子育て「日本とフランスの違い 新生児連れで外出」

フランスで子育て「日本とフランスの違い 新生児連れで外出」

「この場所は私のベビーカーのために確保されています。ありがとう」

 
 
この驚きは、日本の育児書を読んでいなかったせいか夫にはピンと来なかったようで、自分の働いているレストランでも堂々とおっぱいをあげているママがよくいたから、そんなものだと思っていた、らしい。では私も育児書を読んでいなかったら、抵抗なくそれらのことをしていたのかもしれない。
早々に文化の違いを見せつけられ、面白くもあるが少し不安になった出産直後。その後も予想通り驚きと戸惑いの連続だった。きっと私もいつかは慣れるのだろうと、娘の無邪気な笑顔を眺めながら、今はのんびりかまえている。
 

フランスで子育て「日本とフランスの違い 新生児連れで外出」

 
 

Posted by 尾崎 景都

尾崎 景都

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Keito Ozaki
パリ第7大学 言語音声学科 修士課程修了後、日本語教師として活動中。夫は料理人。