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ワーキングホリデーの仕組み「パンケーキで伝えるワーキングホリデー」 Posted on 2018/03/15 辻 仁成 作家 パリ

 
働きながら留学できるワーキングホリデーって知ってます? 海外で働きながら経験を積みたいという若い人よ、ぜひ、読んでほしい。世界に出て、多くのチャンスを掴みたい人に今日はぜひ、読んでもらいたい! ワーホリとは何か? ワーホリを利用するにはどうしたらいいのか? 実はデザインストーリーズの記者さんたちの多くがこのワーホリで短期留学をして海外に拠点を作っていったのです。

若者で賑わう明治神宮駅から徒歩1分、きらびやかなファッションビルが立ち並ぶ一角に一般社団法人日本ワーキング・ホリデー協会(以下、日本ワーキング・ホリデー協会)が経営するパンケーキのお店がありました。名前は「ワーキングホリデー・コネクション」。なぜにパンケーキ? という素朴な疑問とワーキングホリデーについて知りたくて、お話を伺って来ました。

ワーキングホリデーの仕組み「パンケーキで伝えるワーキングホリデー」

 
待ち合わせの時間にドアを開けると、甘い匂いの向こうで笑顔の優しい男性がお出迎え。なんとその方が今日のお相手、日本ワーキング・ホリデー協会の理事長 池口 洲さんその人でした。実は池口さんには第1回アート&デザイン新世代賞の協賛をお願いし、昨年開催した新世代賞でも大変力になってくださった方。そして、最優秀賞を受賞した中村 暖さんは副賞の短期留学のために、今まさに日本ワーキング・ホリデー協会のお世話になろうとしています。新世代賞にも深い関心と理解を寄せ応援してくださる理事長の池口さん。その理念にデザインストーリーズと重なる部分が多くありました。

 
 お久しぶりです。新世代賞では大変お世話になりました。日本ワーキング・ホリデー協会とデザインストーリーズには多くの重なる点があると思って、今日はお話を聞けるのを楽しみに来ました。よろしくお願いします。

池口 洲さん(以下、敬称略「池口」) お忙しい中、ありがとうございます。

 ところで、ここはパンケーキのお店ですけど、日本ワーキング・ホリデー協会とパンケーキってまったく結びつかない(笑)。どうしてパンケーキのお店をやろうと思われたんですか?

池口 びっくりしますよね。海外留学を支援しているはずがパンケーキを焼いているんですから(笑)。

 (笑)本当に! でもなぜ、パンケーキなんですか? 海外、留学、学生とつなげても、パンケーキにはつながらない。ひょっとしてパンケーキで若者を釣ろうとしてる?(笑)。

池口 いえいえ、釣ってない、釣ってないです(笑)。ところで辻さんはワーキングホリデーと聞いて何を思われますか? 

 そうですね、海外留学のための制度、というか、確かになんとなくは理解してはいますが、おそらく正しくは理解できてないかも。なので、今日はその辺をしっかり教えてください。まず、最初の疑問ですが、なぜパンケーキなんですか?

池口 (笑)不思議に思われますよね。実はワーキングホリデーを知らない世代にパンケーキを通して知ってもらおうという思いではじめました。パンケーキは若者に人気のスィーツですし、まずはパンケーキをきっかけにワーキングホリデーに興味を持ってくれたらいいな、と。

 それはつまり啓発ということでしょうか?

池口 はい、そうです。

 パンケーキで啓発なんて誰も考えないですよ。(笑)でもそのセンス、若者目線で素晴らしい。もう少し詳しく教えていただけますか?
 

ワーキングホリデーの仕組み「パンケーキで伝えるワーキングホリデー」

 
池口 海外留学というと、語学が優秀で、家庭が裕福な一握りの恵まれた人たちだけのものと思っている人が、いまだにたくさんいます。でも、ワーキング・ホリデー制度を使えば誰もが手の届くところに海外留学のチャンスがあることに気が付きます。働きながら留学できるワーキングホリデーを通して、海外の著名建築物に触れ帰国後有名な建築家になった人や、世界でもトップクラスのバリスタになった人もいます。でも、ワーキング・ホリデー制度を知っていなければ、このチャンスを手に入れることはできません。1人でも多くの若い人たちにこの制度を知ってもらえる機会を作るために、「ワーキングホリデー経験者の声を身近に聞ける環境」を作る必要があると感じたんです。気負わずに、手軽に聞きに行ける、自然に経験者の生の声を聞くことができる環境を作る。そのために、Café という選択肢は有望でした。

 なるほど。それがCaféでありパンケーキだったんですね。とてもよく理解できました。腑に落ちたというか。ここでしたら気軽に、立ち寄ることができますし、友だち感覚でいろいろな話ができると思いますね。

池口 お店の看板メニューであるパンケーキは、日本で和食を学び、オーストラリアへワーキングホリデーしシドニーの有名パンケーキ店で総料理長を努めた日本人が帰国後開発したオリジナルパンケーキなんです。世界に通用する味を通して、世界とつながる感覚を味わっていただきたくてお出ししています。それからここのパンケーキは休日になると行列ができるほどの人気なんですよ。

 素晴らしい取り組みですね。そこにこのパンケーキがキーワードのように存在している。しかし、見るからにふわふわで美味しそう(笑)。じゃあ、もともとはワーキングホリデーがきっかけで世界に飛び出した人がいて、海外で勉強し、再び日本に戻り今こうして夢を叶えパンケーキを焼いている、ってことですね?

池口 はい、そうです。しかもここで働いているスタッフには、ワーキングホリデー経験者もいます。みなさん英語はOKで、中には数カ国語話せるスタッフもいます。今日はフランス、ドイツから来ている人たちが今ここで働いています。

 だから若い子が多いんですね。お客さんもみなさん学生さんみたいだし。ここに来るお客さんの中にもワーキング・ホリデー制度を利用して日本に来ている人も多くいそうですね。このお店は様々な国の人たちと交流できる場にちゃんとなっている。池口さんが望んだ役割をパンケーキが果たしているということですね。
 

ワーキングホリデーの仕組み「パンケーキで伝えるワーキングホリデー」

 
 ところで、彼らは一体どんな目的でここで働いているのでしょうか? 後で、少しお話をお聞きしますね。では、まずはじめに、日本ワーキング・ホリデー協会について教えください。

池口 現在の日本ワーキング・ホリデー協会はワーキング・ホリデー制度を支援し、促進している非営利団体なんです。もともと、公益社団法人日本ワーキングホリデー協会という組織があって1985年に厚生労働省の外部団体として設立され2010年に破産宣告を受けるまで25年間におよそ35万人以上のワーキングホリデービザ発給に貢献してきたんですけど、企業の退会や大手航空会社が破綻してしまうような厳しい時代の変化についていけずに存続するのが難しい状況になったんです。

 そんなことがあったんですね。

池口 閉鎖せざるを得ない状況に追い込まれたときに多くの利用者からの問い合わせや存続を願う声が殺到して、これは存続しなくちゃいけない、このままで終わらせるわけにはいかないということで、厚生労働省から「どこかでこの仕事を引き継いでくれないか!」という話がありまして、「じゃあ、うちがやります!」と、手をあげたのがはじまりなんです。だから今は厚生労働省とはまったく関係ないところで一般社団法人として運営しています。

 一般社団法人なんですね。

池口 はいそうです。そんなことがあり、「一般社団法人日本ワーキング・ホリデー協会」を設立したわけですが、旧団体が破綻に至った原因を解明しながら問題点を一つ一つ解決し、利用者へのサービス向上を心がけ、若い世代が入りやすいオフィス作りにも気をつかいましたね。実は私も留学経験があり、それまではオーストラリアで公認会計士として長く仕事をしてきたんですが、その経験がとてもこの仕事に役に立っています。

 留学経験もあり、なるべくしてなったとしか言えませんね。あとは、ご縁もあったのでしょうか。ところでワーキングホリデービザは普通のビザとは違うのですか?

池口 はい、ワーキングホリデービザとは、2カ国間の協定に基づいて、各国の文化・生活・言葉を学び、就学・就労体験ができる特別なビザです。1980年に初めてオーストラリアと協定を結んで以来、現在日本は21カ国と相互協定関係にあります。(2018年3月現在)個人で申請することができ、就学・就労・観光を自由に体験できるビザは、ワーキングホリデーを置いて他にはありません。日本ワーキング・ホリデー協会では、日本政府、各国大使館との連携を取り、グローバル人材育成のため1人でも多くの方にワーキングホリデービザを利用した留学を知ってもらうために毎日無料セミナーを開催し、ビザ申請のサポートや語学学校の申込、現地に到着してからのサポートなど、様々な形でみなさんのワーホリ&留学をサポートしています。

 素晴らしいですね。海外に行くのは何となく不安が伴いますし、手続きは難しそうだったりするので、サポート体制が充実していると安心でき、海外に行きたいと思う人も増えるんじゃないかな。ところで、資金の援助もするんですか?

池口 資金の援助はしていません。その代わりに、先ほども話しましたが、渡航に必要な様々なサポートを提供しています。安心して留学でき暮らせる環境を整えるための手助けです。後は、自分で仕事をするなり旅をするなり学ぶなり自分の判断で生活をしてもらうことになりますが。渡航前には諸々の手続きや、事前にやることがたくさんありますから、一つ一つ丁寧にアドバイスしています。

 つまり、日本ワーキング・ホリデー協会は資金援助ではなく、留学に必要な手続きや環境を整えるためのサポートを提供し、背中をそっと押して独立を促す、というスタンスですね?

池口 はい、そうです。安心して留学できる体制を整えて「行ってらっしゃい」と送り出し「お帰りなさい」と迎える。簡単に言えばそんな団体ですね。
 

ワーキングホリデーの仕組み「パンケーキで伝えるワーキングホリデー」

 
●ワーキングホリデー豆知識● 
 
一般社団法人日本ワーキング・ホリデー協会(JAWHM)は、ワーキング・ホリデー制度を支援し、促進している社会一般利益の公益を目的とする非営利団体。日本ワーキング・ホリデー協会ではビザの説明をするうえで留学ビザの取得方法、留学ビザの活用方法、観光ビザでの勉強・留学の仕方、ワーキングホリデービザでの留学も詳しく説明しています。世界ではワーキングホリデービザも長期・短期留学用学生ビザも同じ留学ビザとして扱われています。そのため各大使館、各国の留学機関のご協力のもと留学ビザに変更がされるとすぐに当協会に連絡が入り新しい留学ビザ申請方法を皆様にお伝えする事が可能となっています。
※一般社団法人日本ワーキング・ホリデー協会URL : http://www.jawhm.or.jp

ワーキング・ホリデー制度とは,二つの国・地域間の取り決め等に基づき,各々の国・地域が,相手国・地域の青少年に対して自国・地域の文化や一般的な生活様式を理解する機会を提供するため,自国・地域において一定期間の休暇を過ごす活動とその間の滞在費を補うための就労を相互に認める制度。

ワーキングホリデーに行けるのは、日本国籍を有する18歳から30歳までの人。

ワーキングホリデービザは観光、就学、就労ができる特別なビザです。どこに滞在しても、どこを旅行しても、仕事をしても、語学学校に通っても良いという素晴らしい自由度の高いビザ。制度の趣旨として仕事を主たる目的とすることはできませんが海外で仕事ができるビザは他にはあまりなく、英語の勉強をしたいけど留学は高すぎるからと諦めていた方には大変有効なビザです。予算を抑えて海外に滞在しながら勉強してバイトも出来る素晴らしいビザ。それがワーキングホリデービザです。

 

 
 

posted by 辻 仁成