JINSEI STORIES
父子旅の記録日記「ブルージュのソウルフードを探せ!」 Posted on 2022/06/01 辻 仁成 作家 パリ
2018年の1月、ぼくと息子のでこぼこコンビは、ベルぎーへと父子旅に出た。
北の街、ブルージュは深い陰影が絵画のような世界観を醸し出すあまりに美しい芸術の都である。
ブルージュを代表するものを食べに行こう、ということになったのだ。
今日は、タイムマシーンで、2018年のベルギーへと飛ぶ・・・。
ベルギーはフランスの隣国だが、独特の文化圏なのである。
御覧あれ!!!
息子は「フリット(フライドポテト)の発祥の地はベルギーだからフリットが美味いに違いない」と豪語する。
父は「何が何でもカルボナード・フラマンド、牛肉のビール煮込みでしょ」と譲らない。
息子「あのね、世界中で有名なムール・フリットだよ」
父「何をお馬鹿な、あんなもの! ベルギーを代表するのはベルギーチョコに決まってんじゃん」
親子のバトルに終わりはない。なので、全部、試してみることにした。←正解である。
で、今回は、北のヴェニスと言われるブルージュの美味しいものを探す辻父子の旅、「ブルージュのソウルフードを探せ!」をお送りする。
彼の地を目指す日本の皆様、どうぞ、適当に、参考にされたし(笑)。
1、ワッフル
ワッフルの起源は古代エジプト時代にまで遡る。小麦粉と水を混ぜてこねたものを石で焼いて食べ始めたのがワッフルのはじまりだ。
それが18世紀に入り、卵や牛乳、シナモンなどが加えられるようになり、当時砂糖の生産、輸出に力を入れていたベルギーでは、甘い嗜好品として食べられるようになった。
特にリエージュ(ベルギーの都市)ではパールシュガーがよく使われていた。
リエージュ風ワッフルの生地には今もパールシュガーが混ぜ込まれている。甘い!
ベルギーワッフルにはリエージュ風とブリュッセル風の二種類があり、リエージュ風は楕円形で生地はモチモチ、ジャリッとしたパールシュガーの歯ごたえがある。
そのままでも十分美味しいが、ベルギー名物のチョコレートソースをかけたものは最高!
一方、ブリュッセル風は長方形で生地はサクサクと軽く、ほとんど甘さを加えていないので生地そのものはクレープの皮のような味。生クリームやチョコレート、フルーツなど、トッピングが決め手となる。
我々父子は断然、モチモチのリエージュワッフル派なのだ!
2、ムール・フリット
ムール・フリットとは、ムール貝を白ワインで蒸した料理に、フリット(フライドポテト)が添えられた料理のこと。
ベルギーの郷土料理として世界中で愛されている。
基本材料は白ワイン、セロリ、エシャロット、パセリ、バターなど。
個人的意見だが、特別美味しいとは思わない。
しかし、ベルギーに来たのなら一度は食べなければ、という義務のようなものを感じさせられる一品である。
オススメは基本のものに生クリームを加えたクリーム風。
ちなみに美食家の息子はこのムール・ア・ラクレームが大好物だ。
淡白な味にコクが加わり、これなら父も食べることができる。(実は貝が苦手なだけなんだよ、笑)
ベルギーはプライドポテトの発祥の地(諸説あり)と言われている。
ベルギーのフライドポテトの特徴は太めにカットされており、マヨネーズやケチャップなど、さまざまなソースをかけて食す。
中にはサムライソースなるものまである。
店の人におそるおそる「それはなんだ?」と聞いたら辛いらしい。
知らんがな、と日本人は思うような味であった。
ちょっと辛いオーロラソースのようなもので、内容はマヨネーズ、ケチャップ、マグレブ地域の唐辛子ペースト ハリッサというところか……。
「なんでもかんでも、侍を枕に付けるな」と父が怒ったら隣で息子が笑った。
3、カルボナード・フラマンド
ムール・フリット以外に有名な郷土料理と言えば、カルボナード・フラマンドだ。
今回の父子旅の一番の目的がこれを食べること。
父ちゃんは毎日一度はこいつを食べていた!(店によって味が全然違うので要注意)
濃い目のベルギービールで牛肉を煮込んだシンプルな料理で、イギリスのエールパイ、ハンガリーのグーヤッシュ、フランスのブフ・ブルギニョンを彷彿とさせる。
ヨーロッパ各地にある牛肉煮込み料理、見た目はどれもそっくりだが、味は各国の個性があり、全く違う。
煮込みにかけては一過言ある父ちゃん、その違いを研究するのが楽しくて仕方がない。
「また? さっきも食べたじゃん」
と息子は隣で呆れている。
4、ブルージュ・ジャンクフード
しかし、一番美味しかったのは、水曜日にマルクト広場に立つブルージュのマルシェの屋台で買って食べたカレー味のホットドッグだった。
「そりゃないだろ?」
と息子が美食家を気取る父を軽蔑した。
「しかしな、このカレーケチャップはドイツのカリーブーストのザラザラしたカレーソースよりも何倍もシンプルだし、ソーセージの肉厚さと濃厚さはそこらへんのフランクフルトの百倍はうまいし、下に引いてある玉ねぎのトロトロ感は言葉にできない。鉄板の上でパリから来た私たちに食べられることをじゅうーじゅー待っていてくれたこの素晴らしきホットドッグに欧州一の栄誉を与えたいと父は思ったんだ」
息子君、肩をすくめ、どうぞ、どうぞ、ご自由に、だってさ。
まあ、私たちの胃袋は十二分にブルージュを堪能したのである。
ちゃんちゃん。
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Jinsei Tsuji Acoustic Serenade From Paris
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ということで、今日も読んでくれてありがとう。
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